不動産売却をスムーズに進める事前の準備について

土地などの不動産売却を経験することは、普通余りありません。しかし価額の大きな財産の取引となる上に同時並行で複数の手続きを取る必要もあることから、事前の下調べや準備が大切になります。

 

売買契約締結に向けての買主に対する情報開示のためには、必要書類を準備することが求められることもあります。不動産会社との間では購入希望者が現れるレベルの売却希望価格決定を話し合うことになるので、ある程度は不動産の相場観を涵養することも必要です。

 

最終的には売買契約締結と代金支払いが完了して引渡しに至る過程を経るわけですが、全体の流れを把握しておけば、安心して交渉を進めることが出来ます。引渡し後には買主が家を居住することになるので、購入後のことも想定して注意すべきポイントも幾つかあります。

 

本稿では不動産売却の準備を、全体の流れの中に位置づけて気をつけるべき事項を解説いたします。

 

1.必要書類の準備

不動産売却には必要書類が複数あります。必要に迫られた段階で入手すると慌ててしまいます。事前に何が必要なのかを確認して、早期の段階で準備できるものについては前もって準備しておけば取引は円滑に進みます。重要な書類の幾つかを解説しましょう。

 

不動産登記事項証明書

最初は土地や家についての正確な情報を入手確認あることから始まります。そこで法務局で不動産の登記簿謄本(不動産登記事項証明書)を取得することから始まります。土地の謄本であれば、所在、地目、地積などの基本データのほか、登記名義人が誰であるかを確認できます。

 

登記済み証

いわゆる権利証のことで、売主が売買登記の際に法務局に提出します。平成17年頃以後は登記識別情報通知と形式が異なっていますが、趣旨は同じです。一度紛失すると再発行できないので取り扱いには注意してください。

 

固定資産税納税通知書

これは土地や家などの固定資産税評価額と固定資産税等の税額が記載されています。不動産売却の場面では固定資産税の日割り清算や、不動産の売買登記申請時に納付する登録免許税を算出するのに使用します。

 

重要事項証明書

不動産購入時に仲介業者から交付された書類です。特に土地を不動産売却する際には都市計画法や用途地区で建築可能な建物が限定を受けることがありますが、この書類には行政法上の各種の規制の概要が記載されています。

 

建築確認済み証及び検査証及び建築設計図面、工事記録簿

家などの不動産売却では買主への情報開示のために提供すべき書類です。買主が購入後リフォームを予定している場合には必須の書類です。

 

マンション管理規約や修繕積立金や管理費に関する書類

マンションでは個別に独自の取り決めが管理規約で定められています。不動産売却後の買主の生活や費用などに直結するので用意しておきます。耐震診断報告書やアスベスト使用調査報告書。古い建物では耐震基準や耐火材にアスベストが使用されている可能性があるので、場合によっては提出を求められる書類です。

 

2.相場を知る

不動産売却では売主サイドで売却希望価格を設定することになります。しかし自分の家や土地がいくら程度が相場とされるのか、一般人では判断が難しいのが通常です。それではどのような基準で売り出し価格を判断すべきなのでしょうか。

 

不動産売却の際に、一物四価と言う言葉がよく言われます。これは土地には4種類の代表的な指標があることに由来します。

 

その指標と言うのが、

  1. 実勢価格
  2. 公示価格
  3. 固定資産税評価額
  4. 相続路線価

を指しています。

 

公示地価は国土交通省が発表するもので、一般の土地取引価格の指標になるものです。

 

固定資産税評価額とは固定資産税や登録免許税の計算の際に課税標準となる額で、相続路線価は贈与税や相続税を算出する際に参照される指標です。これら3つの指標は一般的土地取引の基準点でのサンプル価格的意味合いであったり、税の計算のために使われたりするので、売買価格の決定とは場面を異にするのであまり参考にはなりません。

 

実勢価格は、現実に約定した価格について不動産業者へのアンケートを元に公表されているので、特定地域のある程度の相場価格を把握することができます。しかし実勢価格が販売希望価格と必ずしも一致するわけではありません。購入希望者にとって高すぎれば約定しないことになるからです。

 

取引事例が少ない地域ではサンプルの数が限られるので、実勢価格も参考にならないこともあります。そこで実際の不動産売却の際に購入希望者が現れそうな価格を設定することが必要になります。

 

そこで不動産仲介業者に査定を依頼して、売却物件の相場額を提示してもらう方法があります。営業している地域の不動産売却事情に精通している会社であれば、地方でも類似の取引事例を取り扱っている筈なので、実際の相場額を提示してくれます。査定については無料のことが多いので、複数の不動産会社に査定を依頼して、どの業者に仲介依頼をするのかを決定することも可能です。

 

3.流れを知る

不動産売却は通常の売買と異なって、今日明日で契約が約定すると言うわけにはいきません。買主と売主のみならず、不動産会社や金融機関などが関与して交渉は進みます。引越しや学校の転校も併せて必要になれば、それらのスケジュール調整も必要になるので、事前準備として売買契約の交渉から成約までの概要を把握しておくことは大事です。

 

知り合いが購入を希望している等の特段の事情が無い限り、個人が買主を探すのは困難です。そこで不動産会社に売却相談に乗ってもらうことが端緒になります。個々で不動産売却を希望している旨を伝え、査定をしてもらいます。さきほど述べたように査定が先か不動産会社の決定が先かはどちらでも構いません。

 

査定価格に納得したら、不動産会社と媒介契約を締結し、各種の広告などを駆使して購入希望者を探すことになります。媒介契約後は売り出し価格を決定しますが、この時に参考になるのが査定で提示された価格になります。査定価格に納得できなければ言い値で売却希望額を提示することも可能ですが、相場から乖離していれば購入希望者は現れません。

 

仮に現れても相当額のダンピングを要求されることもあります。仮に購入希望者がその地方の不動産相場に精通していれば、価格の割高感や割安感を適格に察知することが出来ます。相場価格から乖離した価格を提示する売主は、不動産売却の経験が少ないと勘ぐられて、相場以下の安値で買い叩こうと売主を丸め込もうとするかもしれません。

 

若干の不満があっても査定価格近辺の価格で売り出し額を決定するのが、売買契約を成約させるためには妥当でしょう。購入希望者が現れれば、価格上昇が始まります。複数の買主が現れれば値が上がることも想定できますが、通常一人の購入希望者を相手の交渉になるので事実上は値下げ交渉になります。

 

交渉がまとまれば売買契約を締結します。決済日には売主は売買代金を支払い、所有権移転登記を申請して買主に登記名義を移すことになります。所有権が移転し、登記名義も買主に移れば、最後に引渡しを行えば不動産売却は終了します。

 

4.注意点を知る

不動産では高額な財産のやり取りが為されるので不動産売却の準備段階から、注意しておく事項があります。幾つかのポイントを押さえておきましょう。

 

まず注意すべきは、準備時の査定価格と実際の売却価格は一致するとは限らないと言う事です。仲介会社が提示する査定価格は、経験から算出された売れそうな価格であって、買主にとって食指の伸びない価格であればいつまでも買い手がつかないまま売れ残ることになります。実際の売却価格はある程度の値引きは覚悟しておく必要があります。

 

また不動産売却には諸費用が必要なことも注意してください。売買契約が成立したら不動産会社にたいして仲介手数料(報酬)を支払い必要があります。

 

個人が売主の場合の速算式は、売却価格×3%+6万円(400万円を越える部分)などで求められます。

 

譲渡益が出れば譲渡所得税も支払います。所有期間が5年内の短期譲渡所得の場合には高額の税率が適用されるので注意しましょう。さらに所有権移転登記を申請する時には、登録免許税を収入印紙で納付します。都市部の高額物件になると登録免許税も相当高額になることもあります。

 

次に注意すべきは不動産会社です。売買交渉では不動産会社の担当者のサポートを受けることになるので信用できる担当者の在籍する会社であることが大事です。1社に仲介を委ねる専任媒介契約や専任専属媒介契約では担当者しだいで、買主に辿り付けるかどうかが決まってしまう側面があります。本当に営業活動しているか不安になりますが、専任媒介では2週間に1度の報告義務があるのでその際に進捗具合を確認することが出来ます。

 

最後に注意すべきは自分の売買物件の権利関係も準備段階で把握しておくことです。仮に過去に銀行ローンを利用していた事実があった場合、すでにローンが返済済みであるのに抵当権設定登記だけが残っている場合があります。抵当権が付いていては不動産売却のトラブルになるので、早い段階で銀行から書類を出してもらって抹消登記を済ませておきましょう。

 

5.家の売却をする前に

 

家の売却をする前に、売れる状態にしておくことも売主にとっては必要です。現状有姿で売れる場合もありますが、事前に内覧もなされることを予想して念入りに掃除くらいは済ませておきましょう。傷が目立って汚れがこびり付いたりしていれば、ハウスクリーニングも検討するべきでしょう。

 

実際に購入希望者が訪れた際には、整理整頓がされていれば購入意欲も上がるはずです。費用をかけたからと言って、必ずしも購入に繋がるわけではありませんが、同じ間取りでもきれいな場合の方が印象は良くなるので、掃除には力を入れておきましょう。後日の引越しに備えて、不用品や粗大ごみなどの処分も掃除と同時並行して進めておけば、引越し費用も節約できます。

 

古い家では何かと経年劣化による不具合が目立つものですが、売りに出す前に修繕をするべきでしょうか。修繕やリフォームをしたところで購入希望者の趣味に合わなければ、購入に踏み切らない可能性もありますし、後日買主は自分の都合に合わせてリフォームを予定しているかもしれません。

 

致命的な欠陥の修繕をするならともかく、リフォームに類似した大規模な修繕は行わず、買主に事後の処理を委ねると言うのが賢明でしょう。古すぎて価格が付かない場合には取り壊して更地で売却することも行われています。

 

家を売る際に注意が必要なのは隣地との境界が画定していない場合です。境界が曖昧では将来的に境界を巡ってトラブルが持ち上がる可能性があります。境界紛争は深刻になりがちなので、境界がはっきりしていないなら土地の境界確定を済ませておくことは必須です。

 

不動産売却後は引き渡すことになりますが、引渡日がいつに設定すべきでしょうか。不動産売却に先立って引越しする必要は無く、居住しながら買い手が見つかるのを待つ方法も可能です。もちろん空き家にしておいたほうが、隅々まで確認できますが必ずしも買主が現れる希望がない以上、早期に引越しをするのも難しい場合もあります。売主と買主の間で協議して引渡日を決めておきましょう。

 

まとめ

不動産売却では多数の書類を用意する必要があるので、早期の準備段階から必要書類を取り揃えておくことが重要です。必須でない書類もありますが、買主に適切な情報開示をすることで、信頼感を得ることが出来、購入意欲もあがります。

 

不動産売却では売り出し価格を売主から提示する必要があります。売買なので売りたい価格と買いたい価格が折り合わなければ契約は成立しません。他方で一般人で不動産価格の相場を知悉していることは通常ありません。

 

不動産価格の相場を知る上では各種の指標がありますが、いずれも一般的取引価格を提示していたり、税額算出のための資料に使われたりする指標なので売買価格算定の上ではあまり参考になりません。実勢価格を参照しつつ、不動産会社に査定を依頼するのが、個別具体的な相場価格を知る上では大事です。査定価格が分かったら、不動産会社を決めます。不動産会社とは専任媒介契約などを締結して、担当者のサポートを受けながら広告などで購入希望者を探しましょう。

 

購入希望者が現れても売り出し価格で約定するとは限りません。購入希望者との交渉の中で値引きがされることも十分あり得ます。さらに注意が必要なのは不動産売却には諸費用がかかると言う事です。不動産会社にたいしての仲介手数料や譲渡益が出れば譲渡所得税、登記申請時には登録免許税がさらに必要になります。

 

専任媒介契約では、一社にのみ契約するので担当者の手腕ややる気に成約率は左右されます。担当者の営業活動は一定期間(2週間に1回くらい)ごとの報告の中でその一端を知ることが出来ます。

 

売主としては、売却物件の権利内容なども確認をしておくことが大事です。最初に不動産謄本を取得すればローン設定時に登記された抵当権が残っていることがあります。その場合には速やかに抹消しておくことが必要です。不動産売却も売買であることに変わりありません。売りに出す前に綿密な清掃等をして、購入意欲が高くなるようにしておきましょう。